前回の手紙では、2023年は実行の年であり、戦略に重要な進捗があり、将来に向け会社をより強固にした年であると書きました。2024年には、フランチャイズと人材への継続的な投資の成果が表れました。お客様に優れたサービスを提供し、株主に堅調な業績を残すことができたことを、私は喜ばしく思います。
2024年には、純収益が前年比16%増の535億ドル、1株当たり利益が77%増の40.54ドル、自己資本利益率(ROE)は500ベーシスポイント以上改善して12.7%、効率性比率は11.5パーセントポイント改善して63.1%、総株主利益率1は52%となりました。
当社には、相互に関連した世界屈指のフランチャイズが 2 つあります。1 つは投資銀行と債券・為替・コモディティ(FICC)およびエクイティ業務2から成るグローバル・バンキング & マーケッツ (GBM) 、もう 1 つはアセット&ウェルス・マネジメント(AWM)です。AWMは世界有数のアクティブ資産運用会社であり、世界のトップ 5に入るオルタナティブビジネス 3 と一流の超富裕層向けウェルス・マネジメント ビジネスをご提供しています。どちらの業務においても、引き続きお客様にサービスをご提供し、さらなるビジネス機会を捉える態勢を整えています。
事業環境が大きく変化する状況では、お客様が戦略上の目標の達成と最重要課題の解決に集中して取り組めるようサポートすることが大切です。GBM では、革新につながる戦略的取引への助言、成長とイノベーションのための資金調達、リスク仲介機能を通じたボラティリティの管理などのサービスをお客様にご提供しています。AWM では、資産運用、ソリューション、オルタナティブ投資のあらゆる面で、アドバイスと投資に対する知見をお客様にご提供しています。
2020 年の投資家向け説明会からの 5 年間は決して平坦な道のりではありませんでした。しかしここまでやり遂げたその成果を、私は誇りに思っています。私たちが自らに課した収益目標のほぼすべてを達成、または上回ることができたからです。長期的な視点でビジネスに投資したことによって、サイクルを通じて 10%半ばのリターンを生み出す道筋ができました。いま、私たちは 5 年後の当社の礎を築こうとしています。経営陣に加えすべての社員とともに、これからの仕事が楽しみです。
コアビジネスの強化と会社の成長
グローバル・バンキング & マーケッツ
2024年、当社のGBM業務では、引き続き世界一流のアドバイスとリスク仲介機能をお客様にご提供しました。投資銀行業務では市場リーダーとしてのM&Aアドバイザー4のポジションを堅持し、またFICCおよびエクイティ業務ではトップ150社との取引関係を過去5年間で向上させました5。同時に、より持続的なFICCファイナンスと株式ファイナンスの純収益は大幅に増加し、合計で2019年以降の年平均成長率は15%に達し、2024年には91億ドルと過去最高を達成しました。
フランチャイズを多角化することによる成果は徐々に表れてきています。過去 5 年間、GBM はさまざまな市場環境でも平均 330 億ドルの純収益と平均 16% の ROE を生み出しました。
キャピタル・ソリューションズ・グループ
将来について考えると、プライベート市場で取引されるプライベートクレジットやその他の資産の出現と成長は、今日の金融における最も重要な構造的トレンドの 1 つであり、私たちはその結節点で事業を展開していると考えています。企業との助言業務の実績は世界 10,000 社を超え、債券と株式の両方におけるオリジネーション機能はパブリックとプライベート双方の市場で強みを発揮しています。そして当社の投資プラットフォームは、流動資産から代替資産まであらゆるアセットクラスに投資資金を集め投下できます。このような組み合わせを兼ね備えている金融機関はゴールドマン・サックスをおいて他にないと確信しています。
これらの強みを十分に発揮しながら上記のトレンドを生かし、GBM と AWM のお客様との相乗効果を高めるために、2025 年にキャピタル・ ソリューションズ・グループを立ち上げ、資金調達、オリジネーション、ストラクチャリング、リスク管理ソリューションのすべてを以前よりも包括的に網羅できるようにしました。
プライベート市場の拡大が続く中、これらの機能のさらなる統合により、お客様により良いサービスをご提供することができます。当社が誇る事業会社との幅広い顧客関係と世界規模の投資プラットフォームを組み合わせることで、プライベートクレジットやプライベートエクイティなどにおいて最も魅力的な投資機会の発掘につながります。
キャピタル・ソリューションズ・グループの所属は GBMですが、プライベート資産に関連する機会を発掘することで、投資銀行のお客様には貴重な資本調達の可能性を、アセット・マネジメントおよびウェルス・マネジメントのお客様にはユニークな投資機会をご提供することができます。まさに、One Goldman Sachs の実践です。
アセット&ウェルス・マネジメント
2024 年も、アセット&ウェルス・マネジメントは、世界有数の企業や団体、ファイナンシャルアドバイザーや個人向けに投資アドバイザリーサービスをご提供し、その契約資産は、長期手数料ベースの純流入が 28 四半期連続で増加し、最高記録を更新しました。ウェルス・マネジメントでの顧客預かり資産総額は約 1.6 兆ドルに達しました6。
また、より永続的な収益も増加しました。2024 年には、年間の資産運用報酬等関連業務の収益目標 100 億ドルを上回りました。資産運用報酬等関連業務とプライベート・バンキングおよび貸付業務の純収益は、2019 年以降、年平均成長率 12%で伸びており、今後も引き続き 一桁台後半の年間成長率を達成すると予想しています。
さらに、2024 年には AWM の税引前利益率が大幅に改善し、中期的な目標である 20% 代半ばの税引前利益率を達成しました。当社は、この事業を 10 %台半ばのリターンに押し上げることに注力しています。
オルタナティブ投資では、旗艦ファンドの規模を拡大するとともに、新しい戦略のファンドも開発しています。当社は引き続き、機関投資家の顧客基盤とウェルス・マネジメントのチャネルの拡大を優先事項としています。 また2024 年には当社のオルタナティブファンドに700 億ドル以上の資金を集め、2025 年も近年と同レベルの資金を集める見込みです。
より効率的な業務運営を目指して
景気が良いとき、組織は、規律ある効率的な業務運営を続けることの重要性を見失いがちです。2024 年に、拠点の配置を最適化し、非報酬費用をより適切に管理し、AIソリューションの使用などを通じて自動化 (そして最終的には生産性) を向上させる 3 年間のプログラムを開始しました。
現在、当社の多くの社員に効率化と生産性向上に役立つ生成 AI 搭載ツールが提供されています。たとえば、開発者用のコパイロットコーディング・アシスタントや、自然言語 GS AI アシスタント、GBM と AWM 全体で開発中の他の事例もあります。
2025 年も、こうしたツールの利用を日常業務の中で増やし続ける予定です。効率性が高まれば、成長に向けたさらなる投資が可能になり、お客様の満足度の向上にも徐々につながることでしょう。
人材と文化への投資
当社は、最も重要な資産である人材への投資も続けています。
当社のパートナーシップ文化が優秀な人材を引き付けることはわかっています。多くの人材がゴールドマン・サックスで長くキャリアを積んでおり、パートナーの 40% 以上が新卒採用で入社しています。他の機会を求めて退職した人でも、重要なクライアントになることがよくあります。当社の卒業生のうち 275 名以上が、時価総額が 10 億ドル以上または運用資産が 50 億ドル以上の企業で経営幹部 (マネージング・パートナーを含む) を務めています。さらに2024 年には、約 25 名のパートナーとマネージング・ディレクターを含む約 380 名の卒業生が、ブーメラン採用として当社に戻ってきました。
今年 2 月、マイアミで年次パートナー会議を開催し、95 名の新しいパートナーを迎えた際、私は当社の文化の強さを目の当たりにしました。2024 年のパートナークラスは多様性に富んでおり、とてもうれしく思います。
同時に、当社の運営構造と成長に合わせて経営陣を組織することにも力を入れています。1 月には、投資銀行業務、FICCおよびエクイティ業務、さらにGBM の顧客担当、それぞれの責任者の変更を発表しました。また、経営委員会に 18 名の新メンバーも追加しました。
経営層の構造を考えるうえでは、次の 3 つのニーズに対応したいと考えました。1) 上級経営陣の効率性の向上、2)より多くの責任と機会を社員に与え、成長を促すこと、3) 実績を積んだ強いリーダーたちを確保すること。経営陣たちは各々、多くの経験と深い専門知識を備えており、リーダーとしてのより大きな役割の中でそれらを生かしてくれています。組織をより強くするため、彼らと一緒に働くことを私も楽しみにしています。
今後の展望: ダイナミックな環境
金融市場の参加者は、米国経済には競争力と持続的な成長機会があると引き続き認識しています。しかし、ここ数週間に見られたように、環境は急速に変化する可能性があります。インフレ、潜在的な関税引き上げ、地政学的緊張や複数の地域にまたがる紛争の長期化などが、世界の成長の足かせとなっています。
欧州の成長は米国に遅れをとっています。欧州の指導者たちからは、ダイナミズムとイノベーションの力を活用しなければならないという危機意識を改めて感じます。欧州の指導者たちが、成長促進に必要な構造改革を行うための国民の支持と政治的意志を持ってもらえることを希望しています。
この 1 年間、CEO と話をするたびに、彼らのほぼ全員が、規制による負担がビジネスに影響を与えていると感じていました。しかし、昨年の米国大統領選挙の結果を受けて、特に米国では CEO のセンチメントに大きな変化が見られました。規制環境の変化が予想されることから、取引への意欲が高まり、2025 年には資本市場の活動がさらに活発になる可能性があります。米国は、世界で最も流動性の高い資本市場を原動力とする、最もダイナミックで革新的なグローバル企業を抱え、世界経済にとって最も重要な成長エンジンであり続けています。2025 年は大きな期待で始まりましたが、環境は複雑化しています。米国のさまざまな政策の最終的な方向性は依然として不透明です。成長を支える側面もあれば、そうでない側面もあると予想しています。特に関税をめぐる議論は企業センチメントに重くのしかかる可能性があり、利益への影響も大きくなるかもしれません。
もっと広い視点で見ると、米国の新政権は発足とともに矢継ぎ早に行動を起こしてきましたが、その中には幅広い政策の変更をもたらしうるものもあります。どの政権でも最初の数か月は政策の不確実性が予想されますが、企業が長期的な計画づくりと設備投資に必要な意思決定を下せるよう、政策がより明確になることが重要です。私が話す多くの CEO は、自社の売上と利益への潜在的な影響を見極めようとしており、その結果、事業法人のお客様の中には、不確実性が晴れるまで慎重に行動する企業も見受けられます。
将来がどうなろうと、私はゴールドマン サックスの軌道に非常に自信を持っています。私たちは、顧客サービス、パートナーシップ、誠実さ、卓越性を徹底的に重視しながら、引き続きお客様へのサービス提供と、株主利益の向上に邁進してまいります。
デービッド・ソロモン
会長兼CEO
「株主の皆様へ」に関する注記
本文は英語原文の一部を翻訳したものです。本文と原文に相違がある場合には、英語の原文が優先します。
将来予想に関する記述
本文書には、財務目標、事業計画、AIの活用やその他生産性向上の取り組み、資本市場および M&A 活動のレベル、規制および規制環境の変更に伴う潜在的な影響など、将来予想に関する記述が含まれています。2024 年 12 月 31 日終了年度のフォーム 10-K に記載されている、将来予想に関する記述の注意事項をお読みください。当社の将来の業績および将来予想に関する記述に影響を及ぼす可能性のあるリスクおよび重要な要因の一部については、2024 年 12 月 31 日終了年度のフォーム 10-K 年次報告書のパート I、項目 1A の「リスク要因」をご覧ください。
脚注
1 株主総利回りは、手数料を支払わずに再投資された配当を含みます。2024 年 12 月 31 日時点の 2024 年株主総利回りは、2023 年 12 月 29 日(2023 年の最終営業日)時点と比較して増加しています。2024 年 12 月 31 日時点のGS IPO 以降の株主総利回りは 、1999 年 5 月 4 日時点と比較して増加しています。
2 投資銀行手数料(アドバイザリー、株式・債券の引受)、FICC、エクイティ業務の累計純収益(2020~2024年の公表データ)に基づきます。同業他社には、MS、JPM、BAC、C、BARC、DB、UBS、CS(2022年度まで)が含まれます。
3 ランキングは2024年第4四半期時点の資産に基づいています。同業他社のデータは、公開されている企業の提出書類、業績発表および補足資料、ウェブサイト、eVestmentデータベース、Morningstar Directから収集されています。GSのオルタナティブ投資総額には、管理下にあるオルタナティブ資産と手数料を生まないオルタナティブ資産が含まれています。
4 出所: Dealogic — 2024 年 1 月 1 日から 2024 年 12 月 31 日まで。発表済み及び完了した取引の両方を指します。
5 出所: 顧客ランキング/スコアカード/フィードバックおよび/または Coalition Greenwich 2024年上半期 (最新) および 2019年度の 機関投資家顧客アナリティックス・ランキングをもとに、ゴールドマン・サックスが集計した上位 150社 の顧客リストおよびランキング。
6 契約資産、ブローカレッジ資産、マーカス預金から構成されます。
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